ニューヨークの雑踏する街角から聴こえる無数の声にインスパイアされた、美しく親密な愛の歌。長年にわたって共演を重ねて来た2人の類い稀な音楽家が実らせた、傑作コラボレーション・アルバム!
ニューヨークとブラジルを往還しつつ、今日的なブラジル音楽の解釈を深化させてきたシンガー・ソングライター/ギタリスト/パーカッショニスト、ヴィニシウス・カントゥアリア。唯一無二のニュアンスに富んだ演奏と極めて多面的な活動によって、現代のアメリカ音楽に多大な影響を及ぼしてきたギタリスト/作曲家、ビル・フリゼール。

グラミー賞の最優秀コンテンポラリー・ワールド・ミュージック・アルバムにもノミネートされたフリゼールの作品『The Intercontinentals』(2003) でのコラボレーションが最もよく知られるところだが、カントゥアリアの最新作『サンバ・カリオカ』(2010) をはじめ、4枚のアルバムでフリゼールが客演するなど、同じ1951年生まれの60才である両者には、長年にわたる交友と共演歴がある。いつか、より突っ込んだ共同作業をしたいとお互いに願っていた2人が遂に実現させたのが、本作『ラグリマス・メシカーナス』である。

本作は、カントゥアリアが故郷のブラジルからニューヨークに移り住んだ際に、ラティーノたちの出自や文化、何よりも彼らが話す言語(主にスペイン語)の多様性に感銘を受けたことがきっかけで書き始めた楽曲をもとに、共同でアレンジを練り、ゲストプレイヤーも入れずに2人だけの演奏を録音しながら、良き理解者であるプロデューサーのリー・タウンゼントを伴って作り上げられた。スペイン語とポルトガル語と英語の歌詞が混在するアルバムの軸となっているのは、NYに生きるラティーノたちの愛と希望なのだ、とカントゥアリアは言う。

この2人で演奏していると常に驚きと安心感がある、とフリゼールは言う。まさ しくリスナーにとっても、驚きと安らぎを同時に与えてくれる、魔法のようなア ルバムである。

ビル・フリゼールとヴィニシウス・カントゥアリアのニュー・アルバム『ラグリ マス・メシカーナス』は、疑いもなく類稀な才能を持つミュージシャン同士の融 合を示している。フリゼールとカントゥアリアの個々の音楽は、どちらも明確に独特な原点を持っているが、お互いのスタイルを補い合っている。情緒豊かなリズムとハーモニー、古典的な音と実験的な音の融合によって、2人のアーティストと、熟練した共同制作者であるプロデューサーのリー・タウンゼントは、お互いに気の置けない居場所を見出している。

ギタリスト、コンポーザー、バンドリーダーとして、ビル・フリゼールは、アメリカ音楽において先見の明がある存在として名声を得ており、とりわけ、革新的かつ即興性の高いギタープレイによって良く知られるところになった。ブラジル出身のシンガー・ソングライター、ギタリスト、パーカッショニストであるヴィニシウス・カントゥアリアは、ボサノヴァの古典的なサウンドと現代的な音楽を見事に結合させ、独特な楽曲やアレンジを作り出している。長年にわたって、お互いのアルバムへの参加も含めて、様々な場で共演を重ねて来たフリゼールとカントゥアリアは、全面的なコラボレーションの機会を求めていた。『ラグリマス・メシカーナス』は、まさに千載一遇の好機だったのである。

カントゥアリアが母国のブラジルからニューヨークに移り住んだ時、彼は、ニューヨークの街の中から生じる、ありとあらゆる音の融合に強い印象を受けた。とりわけ、スペイン語話者の多様性が彼に影響を及ぼした。キューバ人、プエルトリコ人、コロンビア人、ベネズエラ人、メキシコ人をはじめとした無数の人々が、豊かな多文化のコラージュを形成していた。こうした音がヴィニシウスの頭と心を満たしていくと、彼はブルックリンの部屋に戻り、ニューヨークのメルティング・ポット(坩堝)に大きな影響を受けた『ラグリマス・メシカーナス』の楽曲を作り始めた。

50年代から60年代にかけて起きたボサノヴァのムーブメントと同じように、『ラグリマス・メシカーナス』でフリゼールとカントゥアリアは、伝統的なラテンのリズムと即興的なジャズのメソッドを融合させた。ビルはヴィニシウスがアルバムについて抱いていたヴィジョンを理解し、彼らの音楽的な自発性がビルの編曲にインスピレーションを与えた。カントゥアリアが、ポルトガル語とスペイン語と英語が混在する歌詞を書いていくうちに、2人のミュージシャンは、一緒にアレンジを作るリズムに難なく入り込んでいった。お互いのスタイルが違っていても、フリゼールとカントゥアリアは、感動的で息をのむような音楽を作り出した。ヴィニシウスがブルックリンのパークスロープにあるセブンスアベニューを散歩していた経験から生まれた「Calle 7」もそうした1曲だ。

アルバムの核の部分で、フリゼールとカントゥアリアは、お互いに得意とすることを表現しきっている。フリゼールはアレンジと実験的に戯れ、カントゥアリアは詩的な歌詞を動きのあるリズムと織り合わせる。この2人の優れたギタリストが一緒に演奏すると、気高く、美しく、そして入り込みやすくもある音楽世界が生み出される。冒頭の曲「Mi Declaracion」の最初の一音から、結びの曲「Forinfas」にいたるまで、フリゼールの複雑なギタープレイが、カントゥアリアのドリーミーなヴォーカルと感動的な愛の宣言に結びつき、ひとつのヴィジョンを形作る。

ビル・フリゼールとヴィニシウス・カントゥアリアは、『ラグリマス・メシカーナス』を、ひとつのシンプルだが力強い場所、すなわち「愛」から生じる、ただひとつの運動とみなしている。彼らは共に、オプティミズムとチャンスと希望の情熱的な感覚を伝えているのである。

 
 

ヴィニシウス・カントゥアリア:
1951年、ブラジルのアマゾン川流域の都市、マナウスに生まれ、7才の時にリオデジャネイロに移住。1970年代には自身のバンドの他、カエターノ・ヴェローゾのバック・メンバーとしても活躍。80年代から90年代初めにかけて6枚のソロ・アルバムを発表、ヒット・シングルにも恵まれる。90年代半ばにニューヨークに拠点を移し、エレクトロニックでアンビエントなテクスチャーも取り入れて新しいブラジル音楽を追求した『Sol Na Cara』(1996) を発表。以降、コンスタントにソロ作を発表するかたわら、グラミー賞にノミネートされたビル・フリゼールの2003年作『The Intercontinentals』にバンドメンバーとして参加し、共にツアーも行ったのをはじめ、シコ・ブアルキ、坂本龍一、デヴィッド・バーン、ローリー・アンダーソン、アンジェリーク・キジョー、三宅純、宮沢和史など、他アーティストとの共演やアルバムへの客演も多い。2010年に盟友アート・リンゼイのプロデュースによる最新ソロ・アルバム『サンバ・カリオカ』を発表。

ビル・フリゼール:
1951年、メリーランド州ボルチモアに生まれ、コロラド州デンバーで育つ。幼少の頃からクラリネットを習い、ギターは独学で習得。最初はロックやシカゴ・ブルースを好んで聴いていたものの、ウェス・モンゴメリーやジム・ホールといったジャズ・ギタリストとの出会いが、その後の方向性に決定的な影響を及ぼす。北コロラド大学やボストンのバークリー音楽大学で学んだ後、1978年には作曲に集中するために1年間ベルギーに滞在。翌79年にニューヨークに移り住む。1982年にECMから初のソロ・アルバム『In Line』を発表。自身のアルバムのみならず、エベルハルト・ウェバー、ヤン・ガルバレク、ポール・モチアンらによる多くのECM作品に参加する一方で、ジョン・ゾーンをはじめ、NYのダウンタウン・シーンとも交流を深める。80年代後半にはNonesuchに移籍し、安定したペースで次々に傑作を送り出しながら、エルヴィス・コステロ、マリアンヌ・フェイスフル、ヴィニシウス・カントゥアリア、ノラ・ジョーンズ、リッキー・リー・ジョーンズらの作品にも参加。ハル・ウィルナーのプロデュースによる2004年作『Unspeakable』はグラミー賞(コンテンポラリー・ジャズ部門)を受賞。2010年に Savoy Jazz に移籍し、2011年1月にアルバム『ビューティフル・ドリーマーズ』を発表。同年4月には、ギターを中心とした弦楽器奏者のみのユニークな編成による858 Quartetを従えた新作『Sign of Life』を早くもリリースした。1989年から現在までシアトルに在住。

 
 
Mi Declaracio´n ミ・デクララシオン(僕の誓い)
 
Calle 7 カジェ7(セブンス・アヴェニュー)
 
Vinicius Cantuária & Bill Frisell:
Lágrimas Mexicanas

ヴィニシウス・カントゥアリア&ビル・フリゼール/ラグリマス・メシカーナス
ctrd 042
2,415yen (tax incl.)
2011.07.20 in stores

Tracklist
01. Mi Declaración ミ・デクララシオン(僕の誓い)
02. Calle 7 カジェ7(セブンス・アヴェニュー)
03. La Curva ラ・クルバ(曲線)
04. Lágrimas Mexicanas ラグリマス・メシカーナス(メキシコの涙)
05. Lágrimas De Amor ラグリマス・ヂ・アモール(愛の涙)
06. Cafezinho カフェジーニョ(1杯のコーヒー)
07. El Camino エル・カミーノ(道)
08. Aquela Mulher アケラ・ムリェール(あの女)
09. Briga De Namorados ブリガ・ヂ・ナモラードス(恋人たちの諍い)
10. Forinfas フォリンファス

All songs composed by Vinicius Cantuária and Bill Frisell

Vinicius Cantuária - vocals, percussion and acoustic guitar
Bill Frisell - electric and acoustic guitars, loops

Produced by Lee Townsend

Recording Engineers: Jason Lehning and Adam Muñoz
Mixing Engineer: Adam Muñoz
Mastering Engineer: Greg Calbi
Production Assistance: Adam Blomberg

Recorded at Avast Recording, Seattle and
Fantasy Studios, Berkeley
Mixed at Fantasy Studios, Berkeley
Mastered at Sterling Sound, New York

 
 
 
 
 
 
     
     
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